血液がんワクチンとは
内科医は長年にわたり、患者さん自身の免疫システムを使い癌を拒絶することを考え続けてきた。 内因性の抗腫瘍免疫反応は、すぐれた腫瘍特異性、低畜性、また免疫学的記憶という現象の永続性を秘めている。 さらにがんワクチンは、手術、放射線、化学療法という標準治療にプラスすることができる魅力的な 補助治療でもある。
Lasalvia-Priscoとそのグループは、進行癌の治療に対し、自己動脈血液を用いた新しいがんワクチンの 臨床トライアルを報告している。よく同定されたがんワクチンは腫瘍抗原、例えばペプチドベース、 蛋白質ベース、そしてプラスミドDNAワクチンを含む。これらのワクチンは比較的容易に製造でき、 明確なターゲットを持ちまた安全性も兼ね備えている。
ただこのワクチン単独では完全ながんの拒絶は不可能であり、また治療に耐性化したがん細胞が増殖してくる。 がん細胞の各種治療に対する耐性化は、非常にやっかいな問題である。がん細胞の急速な増殖に 伴って起こるがん細胞の変異とともにがん細胞抗原が変化してしまうことが耐性化・エスケープの原因と考えられている。
しかしながら非常に重要なことは、患者さんの血液自体がこのワクチンの作製材料である為、常に新しい ガン抗原(動脈血に存在するがん細胞由来の抗原)を反映するがんワクチンを、何回も繰り返して作れる という利点である。つまり耐性化したがん細胞に対して、もう一度それに対抗するワクチンが作れるという 点なのである。このがんワクチンに反応したがん組織の病理学的所見は、間質細胞の著名な増加、 CD3+ Tリンパ球の浸潤が特徴的である。
抗腫瘍効果に関しては下記の様に考えられている。
抗腫瘍効果
- がんワクチンは投与後、数週間して効果がはっきりしてくる
- 効果は乳癌・大腸癌・卵巣癌・前立腺癌・膵癌に限らず、すべての固型癌に起こる
- 効果は転移しているがんで認められており、化学療法耐性のステージでも有効とされている
- がんワクチンは1週間に1回の投与である